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RNAウイルス分野 学生居室

研究室について

朝長研究室の紹介

教授略歴

  • 1983年3月
    福岡大学附属大濠高等学校卒業
  • 1990年3月
    鹿児島大学農学部獣医学科卒業
  • 1994年3月
    東京大学大学院農学研究科博士課程修了
  • 1995年4月
    米国タフツ大学医学部博士研究員
  • 1998年7月
    北海道大学免疫科学研究所 助手
  • 1999年4月
    大阪大学微生物病研究所 助手
  • 2000年12月
    大阪大学微生物病研究所 助教授
  • 2011年2月
    京都大学ウイルス研究所(現:医生物学研究所) 教授
朝長教授

研究内容

私たちの主な研究対象はRNAを遺伝情報にもつボルナウイルス科のウイルスです。現在までにボルナウイルス科には3属が同定されています。 そのなかで、オルソボルナウイルス属にはヒトに致死性脳炎を起こすことが知られているボルナ病ウイルス1型(Borna disease virus-1: BoDV-1)とカワリリスボルナウイルス(Variegated squirrel bornirus-1: VSBV-1)がいます。 また、オウムを中心に鳥類に予後不良の腺胃拡張症をおこす鳥ボルナウイルスの仲間が15種類知られています。 ボルナウイルスはウイルス学的にとても謎の多いウイルスです。RNAウイルスにもかかわらず核内に留まり複製する仕組みやウイルスゲノム配列が安定に維持される機構など、他のウイルスではわからないウイルスと細胞とのかかわりがボルナウイルスの研究から見えてきます。 また、ボルナウイルスは進化の過程で私たちのゲノムに内在化して何千万年も引き継がれてきたことがわかっています。ボルナウイルスは生命とウイルスの共進化の謎を解く貴重な証拠にもなっています。 さらに、私たちはBoDV-1が細胞核で持続感染する性状を利用して、iPS細胞や間葉系幹細胞で安全かつ安定に遺伝子発現が可能な新しいウイルスベクターREVecを開発しました。 現在、難治性疾患治療への応用に向けて研究開発を進めています。

I. 核内持続感染RNAウイルスの感染原理究明

核内持続感染RNAウイルスの感染原理究明

ボルナウイルスは細胞核で持続感染します。これは、RNAウイルスとしてはきわめて特殊な感染様式です。 私たちはこれまでに、多角的なアプローチにより、ボルナウイルスが宿主の細胞の仕組みを巧みに利用して、その複雑な感染様式を成立させていることを明らかにしてきました。 そのひとつに細胞染色体との相互作用があります(図)。 しかしながら、RNAウイルスでありながら変異が少ない特性、ウイルスの受容体、伝播機構、複製複合体が染色体に接合するメカニズムなど未だに不明な点も多く残っており、その詳細な感染原理を究明することを目指しています。 ボルナウイルスの核内感染を明らかにすることは、感染現象の多様性を知るだけではなく、ウイルスの宿主への適応戦略についての本質を明らかにできると考えています。

II. ウイルスと生命の共進化解明

ウイルスと生命の共進化解明

私たちはヒトをはじめとする多くの哺乳動物のゲノムにボルナウイルス由来の遺伝子配列が内在化していることを発見しました。また、哺乳動物ゲノムを網羅的に調べることで、約1億年前には既に、多くの哺乳類の共通祖先にボルナウイルスが感染していることも明らかにしました。私たちの研究室では、宿主ゲノムに組み込まれた内在性ボルナウイルスの保存性や発現の謎を解析するとともに、宿主細胞における機能を追究しています。内在性ウイルスの研究は、ウイルスと宿主が互いに影響しあい進化を遂げる共進化のメカニズムを明らかにするだけではなく、生命進化におけるウイルスの存在意義に関しても多くの知見をもたらしてくれると考えています。

Ⅲ. RNAウイルステクノロジー開発

RNAウイルステクノロジー開発

ボルナウイルスが核内で長期間感染を持続する特長を利用することで、私たちは標的臓器や細胞において持続的に蛋白質や低分子RNAを発現できるエピソーマル型RNAウイルスベクター(REVec)を世界で初めて開発しました。 REVecは脳神経細胞への遺伝子導入に有用であることに加え、iPS細胞をはじめとした様々な幹細胞にも安定かつ安全に遺伝子を導入できることを示しました。 私たちが開発したREVecは、脳疾患の遺伝子治療や幹細胞を用いた遺伝子細胞医療に応用できる可能性があります。 現在は本ベクターの実用化を目指して研究開発を進めています。